かゆみを伴って慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)です。その根本には皮膚の乾燥やバリア機能異常があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。慢性的ではあるものの、適切な治療をきちんと受ければ、いずれ治ったと同然の状態になることが期待されます。
アトピー性皮膚炎には季節性があります。夏場に悪化する人や冬場に悪化する人など、かなりの個人差がみられます。年齢による症状の差もあり、乳児期、幼小児期、思春期・青年期と、それぞれの時期によって発疹の出やすい部位やその症状も異なります。そして乳児期や幼小児期に一旦治った人が、思春期以降に再発するということも少なくありません。
アトピー性皮膚炎は遺伝的素因に加え、様々な内的、外的悪化素因を持った皮膚病ですので、現時点では病気そのものを完全に治す薬物療法はありません。したがって対症療法が治療の原則になります。
薬物療法の中心となるのは、各種外用薬(塗り薬)と抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服薬(のみ薬)です。外用薬には、ステロイド外用剤や非ステロイド性免疫抑制剤、保湿外用剤などがあり、症状により使い分けます。もちろん、皮膚の炎症を予防するためのスキンケア(皮膚を清潔に保つ、保湿を行う)や、原因や悪化因子を避けることも大事な治療です。
そしてこの状態を維持することで、病気を苦にすることなく、楽に生活できることが期待されます。つまり、治療の目標はいきなり『完治』を目指すのではなく、『普通の治療で普通の生活ができる』ようにすることです。ひとりひとりで異なる治療目標に対し、アトピー性皮膚炎をコントロールしていきましょう。